登山ナビNV-U37は使えるか? vs GAMIN GPS

|

八ヶ岳縦走と白根三山縦走で試す

2011/6/30から7/3にかけて八ヶ岳縦走(編笠山から赤岳を経て蓼科山まで)、2001/7/10から7/12かけて白根三山(北岳、間ノ岳、農鳥岳)縦走をしたときに、常用のGAMIN HCx Vistaと共にNV-U37を持ってゆき登山で使い物になるのか試して見ました。
結論から言うと、本格的な登山ユーズにはバッテリーの持続時間が短いことと交換できないことがネックとなりますが、条件付きでなら使えそうです。

気になるバッテリーの持ち

八ヶ岳縦走

3泊4日の山旅でしたが、予備バッテリーの都合でNV-U37の電源を入れたのは初日と4日目です。
NV-U37はスーパースタミナモードに設定しました。バッテリーの駆動時間はカタログでは最長11時間持つと書かれています。
ザックのベルトに付けたポケットに入れて使用しましたが、タッチ画面のために、ポケットに入れておくと画面に触れるらしく時折電源が入ってしまいます。
このため、両日とも8時間を少し越えたところでバッテリー残量の警告がでました。
登山でのハンディGPSの持ち方は、ポケットに入れるのが一般的と思うのですが、触れると画面が表示されるタッチパネルのGPSだけでなくにこの持ち方は合わないようです。

背負っていたザックです。
肩ベルトの向かって左側のオレンジのポケットがGAMINのGPS、右側の赤いポケットがスマートフォン、その上の黒いポケットにNV-U37を入れて歩きました。
ザックとGPS

幸い、初日と4日目は歩いた時間が8時間と少しだったのでバッテリー切れに遭遇せずに済みましたが、10時間前後を歩いた2日目と3日目だったら間違いなく途中でバッテリーが切れていました。NV-U37はUSBソケットから充電している時はACやDCから充電している時と違って、操作ができません。つまり、登山中にバッテリーが切れた時にUSB充電器から充電をすることはできるのですが、充電中は使うことが出来ないのです。

白根三山縦走

八ヶ岳縦走ではスーパースタミナモードにして使ったのですが、画面がオフとなってナビを見たいときはパネルとタッチして起動させなければならないのでとても使いにくく感じました。
そこで、白根三山縦走では画面が薄暗くなるがオフにはならないスタミナモードで使ってみました。
スタミナ-モードでの使用時間はメーカーで最長9時間と書いています。

初日は広河原の登山口から北岳肩ノ小屋まで、約5時間。
バッテリーのレベルゲージは半分よりすこし減った位を差していて、「これはメーカーの9時間近く持つのでは」と期待させてくれました。

翌日、北岳、間ノ岳、農鳥岳と順調にこなしまし。約5時間を経過していた農鳥岳でバッテリーのレベルゲージを見たときには、昨日と同様に半分より少し減ったくらいでした。大門沢小屋までバッテリーが持つかと喜んでいたら、大門沢に降り始めたときにバッテリー切れ。起動してから約7時間でした。最長9時間なので7時間持てばまずまず持った方という印象です。
気になるのが、小一時間前に見たときには1/3以上のバッテリー残量があったはずなのに、バッテリーが切れてしまったことです。バッテリーのレベルゲージが多めに表示される傾向があるのかもしれません。
間ノ岳の山頂の手前で映したU37。左上のバッテリーのレベルゲージはまだ半分以上を差していますが、農鳥山を越えたところで電源が涸れてしまいました。
間ノ岳の山頂までの軌跡

ニッカド水素乾電池からの充電

八ヶ岳縦走

ソニー製のUSB充電器も発売されているのですが、手持ちの乾電池式USB充電器を使用しました。
使用した電池はパナソニック製のニッカド水素乾電池(2400mAh)とサンヨーのエネループ(1900mAh)です。どちらからも充電することが出来ました。ただ、電池の容量が減ったためか、一度充電した電池からは充電することが出来ませんでした。一緒に携帯したREGZS Phoneも充電が出来なかったので(前回は問題なくできた)、使用している乾電池式USB充電器と相性が悪いのかも知れません。

初日の夜に充電をしているところです。チャージの赤いランプが付いていたのでてっきり充電できていると思っていたのですが、翌朝スイッチを入れてみても反応が無くバッテリーが空となっていました。充電されなかったようです。
未使用のエネループに電池を替えてみたところ、充電が出来ました。
このパナソニックのニッカド水素乾電池も帰宅後に充電をしてからNV-U37に再度充電を試みたらしっかりとフル充電が出来ました。
乾電池式USB充電器

白根三山縦走

近所の家電量販店ではソニーのUSB充電器が欠品していたので、エネループ用のUSB充電器を購入、NV-U37に使用してみましたが、初日の夜に充電をしてみたら、うまく充電できませんでした。やむを得ないので手持ちの乾電池式USB充電器を使用したところ、うまく充電できました。
翌日の2日目の夜にまた充電をしてみたらうまく充電できました。

帰宅後に2つの充電器で条件を変えながら色々と充電を試して見たのですが、充電できないことが何度かありました。USB端子から乾電池式充電器を使用するのには癖があるようです。
完全に充電済みのエネループで充電をしたところ、双方とも充電が出来ました。
スマートフォンに充電後のエネループで充電を試みましたが、双方とも充電できませんでした。
完全に充電済みのパナソニックニッカド水素乾電池で充電を試みたところ、手持ちの乾電池式USB充電器では充電できませんでした。

SONY 純正品で試していないので何ともいえないのですが、SONY以外の乾電池式充電器との相性はお世辞にも良いとはいえません。

サンヨー単三形eneloopで充電する

色々な電池でNV-U37の充電を試しましたが、サンヨー単三形eneloopを使ってサンヨーKBC-E1ASUSB出力付充電池で試した結果です。
KBC-E1AS

結論から言うと、1900mAhの容量の単三形eneloop2本を使って充電をしたところ、3回の充電でNV-U37のバッテリーが一杯になりました。
つまり、6本の単三形eneloopが必要だったわけです。
八ヶ岳や白根三山で充電したのは2本、ないし4本の単三形ニッケル水素充電池を使用していたので、NV-U37の内蔵バッテリーを一杯にすることが出来なかったわけです。6本必要なのに2本か4本で充電をしようとしていたので、充電が出来ないという症状が出た様です。

NV-U37のバッテリーの実質の持ち時間は約7時間から9時間。まず1日持ったとしても、単三電池6本が必要なことになります。
八ヶ岳縦走には5日を費やしているので、5日*6本=30本の単三電池が必要なことがわかります。
さすがにGPSのために30本の乾電池を背負ってゆく気は起きません。

少なくとも、数日をかける縦走登山にはNV-U37はバッテリーから見ると、向いていないようです。

道路の地図は見やすい

八ヶ岳縦走

小淵沢駅から富士見台まで約3時間ほど車道を歩きました。NV-U37の地図は徒歩のナビモードを使用しました。アウトドア地図は使っていません。
さすがに徒歩ナビモードを備えているので、NV-U37はとても見やすい地図を表示してくれます。GAMIN Vista HCxにインストールしてある地図が登山に特化したものなので、比較にならないくらいです。GAMIN Vista HCxを使っていつも苦労していたのが、登山道を出てからバス停や駅までの行程でした。GAMINの地図には国道が赤で表示される以外は都道府県道も市町村道もみんな茶色でわかりにくかったのです。

小淵沢駅から富士見台まで歩いた時のナビの写真です。徒歩モードのナビはGAMINのGPSに比べると桁違いに見やすいです。
小淵沢駅付近の道路

これがGAMINのGPSの道路標示。NV-U37と違ってモニターに映される地図だけで富士見台まで行くのは困難です。
GAMIN HCx Vista

山の地図は見づらい

八ヶ岳縦走

ハンディGPS用に加工されたGAMINの地図と国土地理院の電子マップを無加工でそのままインストールしただけのNV-U37を比べるのは酷かも知れませんが、国土地理院の電子マップを見慣れている人でも情報は読み取りにくいです。
NV-U37のユーザー層は国土地理院の電子マップをあまり見ない人がほとんどと思われますので、すこしミスマッチの様な気がします。

これは、国土地理院の1/25000の電子地図が元々が紙用に製作されたものを、ほとんどデザインを変更せずにそのままデジタル化したために見づらく感じるのだと思います。やはりモニターで見るにはモニターで見るのに最適化した地図が必要なのでしょう。それと、電子地図はパソコンの大きなモニターで見ることを前提としているので、NV-U37の様な小さなモニターに映すと見づらいのでしょう。

縮尺は200m、400mとメーターで表されるのですが、最大縮尺が200mとかなり荒いです。わたしがGAMIN Vista HCxで使用している縮尺は80mか120mです。

大河原峠のNV-U37の写真です。
等高線の間隔が疎らな上に地図が北を向かないので、とても見づらいです。
大河原峠

GAMIN GPSの写真です。モニターに映す前提に加工された地図なのでとても見やすいです。縮尺も80mに拡大してあるので等高線も密に表示されていて、これから進む道がどの程度の勾配があるか、地図を見ただけでおおよそ分かります。
大河原峠

白根三山縦走

今回はNV-U37をメイン、GAMIN GPSをサブとして使用したのですが、歩いた軌跡を液晶モニターに映して見るのならそれほど見づらいとは感じませんでした。自分の歩いてきたルートの確認には十分使用に耐えられそうです。

困るのは、これから歩こうとするルートの確認をするときです。
アウトドア地図は200mで使うことを前提にしてあるので、400mの縮尺にすると文字が小さくなって読みづらくなり等高線は密になりすぎてどの程度の勾配かが読み取りにくいです。

また、200m縮尺では画面に表示されるエリアが狭く、これから進む方角の地形を十分な広さで映すことが出来ません。
山頂までどのくらいの距離があるのかNV-U37で確認をしようとすると、200mの縮尺では無理で、縮尺を400nmにいちいち変更せねばなりませんでした。400mの縮尺にすると文字が読めなくなりますから、目的地らしい地形に地図をずらしてまた200mの縮尺に戻す操作をします。

U37の地図で進行方向を確認するのには、ナビモードから地図の表示モードにする必要があります。
通常のハンディGPSでは現在位置が画面の一番下にあり、進行方向が上に広く表示されるのですが、U37は中心に現在位置が表示されるために、進行方向が表示される範囲は広くありません。このため十分な範囲の地図を表示できないのです。
この写真は、間ノ岳の直下から間ノ岳までの距離、等高線の密度を見ているところです。
間ノ岳の山頂

地図は北向きで固定

八ヶ岳縦走

地図を読む基本は、自分の進む方角に地図を向けることなのですが、NV-U37のナビモードではこの機能が搭載されているのですが、アウトドア地図では地図は常に北向きとなっています。南に進んでいると地図上では逆方向に進む様に表示されるので、NV-U37の画面を見ながら頭の中で変換をしなければなりませんでした。
NV-U37を進行方向に回して見ても良いのですが、文字が逆さになったりして読めず頭が痛くなりそうなのでやめました。

白根三山縦走

進行方向に地図が向いてくれないのはどうしても使いにくいです。本来のNV-U37はちゃんと向いてくれるのでなおさらそう感じます。

GPSの受信の精度は高い

八ヶ岳縦走

2007年の設計のGAMIN Vista HCxとの比較ですが、厚い雨雲に降雨、深い樹林帯というGPSの電波を受信するのにはきわめて悪い条件の下でもNV-U37はGPSだけでなく衛星からの信号を失うことなく受信していました。アンテナの受信の能力の実用性はGAMIN Vista HCxと遜色はありません。

白根三山縦走

初日の午後が夕立、大きな積乱雲が頭上を覆い、雷が鳴り大粒の雨が降る天候でした。
GPSの軌跡を見てみると、電波の受信に多少混乱していますが、登山の実用上の許容範囲で受信の能力の高さがあらためてわかりました。

位置情報と地図への表示

登山でハンディGPS用が活躍するシーンの一つは、道を間違えた時です。
道を間違えたかどうかはハンディGPSの現在位置情報を見れば確認が出来るのですが、NV-U37の位置情報の取得はかなり正確です。悪条件下でも正確に地図上に位置を表示してくれるので、地図画面を見ながら慎重に行動をすれば、元の道に確実に戻れるでしょう。

4日目の蓼科山に登る道の様子です。
幸いに雨は上がっていましたが、時折ぽつぽつと降って来ました。厚い雨雲が山頂にかかっていたようです。
道は深い樹林の中で、樹木の上の方は霧に包まれていました。
GPSの微弱な電波を受信するには厳しい条件でしたが、NV-U37はGPSの信号をほとんど失うことなく受信していました。
雨と霧と雨雲

高度情報

GAMIN Vista HCxは高度をGPSからの信号のほかに気圧で修正を加えているのでかなり正確なのですが、NV-U37は若干劣るものの、GPSからの信号だけで測定しているにしてはかなり正確な高度を表示します。誤差は最大で10mでした。

蓼科山の山頂のNV-U37です。
標高2530mと表示されています。これは実際の標高と全く同じです。誤差がありません。
蓼科山

蓼科山のGAMIN GPSです。
こちらの標高も2530mを表示しています。
GAMIN HCx Vista 蓼科山

片手で操作できない

GAMIN Vista HCxの場合、全ての操作を片手で行うことができるのですが、NV-U37は製品の性格上、モニターが横型と言うこととタッチパネルを搭載したと言う事から片手で操作をすることはほとんど出来ません。省電力モードなので画面はすぐに消える設定なので、消えた画面を呼び出して地図を表示させるという簡単な動作でも両手を使わなければ出来ません。
この操作性の悪さは以外に強く感じる様で、歩いている時、NV-U37を取り出して地図を見るという作業が苦痛に感じることもありました。ただし、これはGAMIN Vista HCxを併用しているために感じたことかも知れません。
すこし使うことに慣れて片手で操作ができる様な気がしてきたら、危うく落としそうになったので片手操作はやめました。

使用温度

カタログ上の使用条件でGAMIN Vista HCxが-15℃から70℃の温度で使用できるのに比べて、NV-U37は5℃から45℃の温度でしか使用できません。5℃と言えば、夏の大雪山や北アルプスでは下回ることもあります。夏山登山でも使えないGPSと言うのもどうかと思います。
10月の穂高岳の早朝は氷点下となるので、NV-U37の使用は厳しいかもしれません。GAMIN Vista HCxは2011/10に穂高連峰を縦走した時に使用した実績があります。

使用条件

白根三山縦走

今回の最低気温は11日の北岳肩ノ小屋の早朝の10℃、最高気温は15℃。
標高は北岳肩ノ小屋が3000mで、その後も北岳、中白根岳、間ノ岳、西農鳥岳、農鳥岳の5座の3000m峰を越え、おおむね2800m以上の標高のある稜線を歩きましたが、バッテリーの切れた大門沢の分岐まで、特に不具合は感じませんでした。
写真は間ノ岳の山頂です。
間ノ岳の山頂

10日の雷雨の中の使用でも、耐えてくれました。
八ヶ岳縦走の時も雨に降られましたが、今回はそれ以上の激しい夕立でしたが、十分な防滴性能を持っているようです。
日常的に出会う雨のなかで使う程度なら、問題はなさそうです。

北岳の二又から肩ノ小屋まで激しい夕立に降られているときの写真です。
北岳の肩の雨

GAMIN Vista HCxとNV-U37の比較

この2つの製品は、そもそも製品の開発コンセプトが異なるので、直接比較をしてはいけないのかもしれません。 GPSの精度は、登山の現場で使う限り差はありません。
登山なら圧倒的にGAMIN Vista HCxが使えます。見やすく常に進行方向を向いてくれる地図、片手で全てを操作できること、電源が乾電池なので充電ではなく取り替えることが出来る、などがGAMIN Vista HCxの優位性です。

ただ、価格を考えるとNV-U37はコストパフォーマンスに優れています。徒歩で道路を歩くときのナビの機能はすばらしくGAMIN Vista HCxではとてもまねが出来ません。登山でも自分の位置情報は正確に取得できますし、歩いてきた軌跡も画面に表示してくれます。往路と復路が同じ道の登山なら下りに霧が出て迷いそうでも軌跡を頼りに歩けば道に迷うことも防げます。

NV-U37を登山で使うのなら、「日帰り登山。1日に歩く時間が8時間前後」。これが一つの目安です。
1日の行動時間が常に8時間を超える人や2日以上を山の中で過ごす人には向かないでしょう。

逆に登山はトレッキング程度、主にサイクリングやウォーキングに使うならNV-U37がお薦めです。高価なハンディGPSはトレッキングにはもったいないですが、多目的に使えるNV-U37はコストパフォーマンスに優れているので、多様な使い方が出来ます。

更新の記録

白根三山縦走の記述を追加しました(2011/7/20)。

サンヨーeneloopで充電する記述を追加しました。(2011/8/4)

NV-U37の記事の一覧

PR

液晶画面 楽天市場でNV-U37を買う。
AmazonでNV-U37を買う。

ソニーストアでNV-U37 iconを買う。
NV-U37 自転車専用クレードルキットを買う。

カテゴリ

ウェブページ

Powered by Movable Type 4.1

このブログ記事について

このページは、mizunumaが2011年7月 4日 17:51に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「SONY NV-U37 vs NV-U35 比較レビュー」です。

次のブログ記事は「自転車ナビ NV-U37 レビュー」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。